県立博物館と県立考古博物館、山梨県埋蔵文化財センターなどの共同研究グループは、県内で発掘された縄文時代中期(約5,000年前)の土器の中からダイズの痕跡を発見しました。また、縄文時代晩期前半(約3,000年前)の土器からは、イネやムギなどの貯蔵穀物につく害虫であるコクゾウムシの痕跡を発見しました。
意義は?
ダイズは最近九州で発見された国内最古の事例をさらに1500年ほどさかのぼる貴重な発見です。栽培植物自体は他の縄文遺跡からも発見されていますが、ダイズは主食ともなりうる点で重要です。中部山岳地域は縄文時代中期の遺跡が集中することで知られますが、その繁栄を支えた生業がどのようなものであったかについて今後見直しが進む可能性が出てきました。
コクゾウムシは山梨県周辺において縄文時代の終わりにはすでに穀物の栽培、もしくは貯蔵がおこなわれていたことを示しています。
いずれの発見も狩猟・採集が中心であったとされる縄文時代の食生活に見直しを迫る大きな発見です。
どうやって見つかった?
これらはレプリカ・セム法と呼ばれる方法で見つかりました。土器についた穀物や昆虫などの圧痕を調べるために用いられる方法です。まず、穀物などがついたくぼみの痕を探し(穀物自体は残っていません)、そこにシリコン樹脂を流し込み型どりをします。次に、はがした型(レプリカ)を走査型電子顕微鏡(SEM)などで拡大し観察、同定します。
マメなどが炭化して出土した場合には、新しい時代のものが混入した恐れが常に付きまといます。この方法の利点は、土器を作る時(焼く前)に付いたものであることから、間違いなく土器が作られた時点で存在したことが明らかにできる点です。
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