小川 正子
プロフィール 年表 エピソード1 エピソード2
・プロフィール
【人物の氏名】
小川 正子
おがわ まさこ
Ogawa Masako
【生没年】
明治35年(1902)生まれ 昭和18年(1943)死去
【出身地】
山梨県東山梨郡春日居村(笛吹市)〈峡東地域〉
【パネルの言葉を残した背景】
長島愛生園(岡山県)に勤め、ハンセン病医療に尽くした小川の短歌。患者を収容する際の家族の別れにあたって詠んだもので、当時の同病の隔離政策の悲しさを表現している。
【人物の解説】
東山梨郡春日居村(現在の笛吹市春日居町)の小川家に生まれる。県立高等女学校(現在の県立甲府西高校)卒業後、のちに衆議院議長となる樋貝詮三と結婚するも離婚。その後、東京女子医専(現在の東京女子医科大学)で学び、長島愛生園(岡山県)でハンセン病医療に尽力。その体験を綴った『小島の春』を刊行し、映画化される。その後、結核を発病して、41歳で世を去る。『小島の春』のほかにも、数々の和歌を残しており、小川ゆかりの地に数々の歌碑が建てられている。春日居町名誉町民。
・年表
年代 |
出来事 |
明治35年
(1902) |
東山梨郡春日居村(現在の笛吹市春日居町)小川家に生まれる |
大正3年
(1914) |
春日居尋常小学校(現在の春日居小学校)卒業 |
大正7年
(1918) |
山梨県立高等女学校(現在の県立甲府西高校)卒業 |
大正10年
(1921) |
樋貝詮三と結婚 |
大正12年
(1923) |
離婚 |
大正13年
(1924) |
東京女子医学専門学校(現在の東京女子医科大学)入学 |
昭和4年
(1929) |
全生病院(現在の国立療養所多磨全生園(東京都東村山市))を見学する
東京女子医学専門学校本科を卒業
東京府の大久保病院に勤務する |
昭和5年
(1930) |
泉橋慈善病院賛育会に勤務する |
昭和7年
(1932) |
岡山県の長島愛生園に勤務する |
昭和8年
(1933) |
九州へ患者検診の旅に出る |
昭和11年
(1936) |
高知県へ患者検診の旅に出る
長島愛生園で長島事件が起こる |
昭和13年
(1938) |
結核で倒れる
『小島の春』を刊行 |
昭和14年
(1939) |
療養のため帰郷 |
昭和15年
(1940) |
映画「小島の春」が放映される |
昭和18年
(1943) |
逝去 |
昭和59年
(1984) |
春日居町名誉町民となる |
平成3年
(1991) |
春日居町郷土館(小川正子記念館)開館 |
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・エピソード1
【ハンセン病とは】
涯ハンセン病は、らい菌によって引き起こされる感染症で、らい菌はノルウェーの医師ハンセンによって1873年に発見された。
1943年に治療薬プロミンが開発されるまで有効な治療法が無く、脱毛や変形、知覚障害を伴う症状から大変恐れられ、非常に感染力が低い疾病であるにも関わらず、患者への差別が行われていた。
わが国では癩予防法(明治40年制定「癩予防に関する件」をもとに昭和6年制定、昭和28年に「らい予防法」となり平成8年に廃止)によって、療養所への患者の強制的な隔離が行われ、医学的に克服されつつある疾病であるにも関わらず、患者の人権の抑圧や差別が長らく続いていた。
・エピソード2
【ハンセン病医療に尽くす】
小川正子は、東京女子医専(現在の東京女子医科大学)の卒業間際、全生病院(現在の国立療養所多磨全生園(東京都東村山市))でハンセン病と出会う。これをきっかけに、小川はハンセン病医療に携わる道を歩むことになる。
昭和7年(1932)に、家族の反対を押し切り岡山県にあるハンセン病施設の長島愛生園に渡る。小川は園長の光田健輔に一報を送っただけで突然長島へと渡ったとされ、園のスタッフは突然出現した小川を「桟橋から来た娘」と呼んだという。
小川は愛生園で患者の治療にあたるとともに、各地へと検診や講演に赴いて患者の入園をすすめていくが、この際の経験が「先人の言葉」の和歌「夫と妻が親とその子が生き別かる 悲しき病世になからしめ」や『小島の春』の執筆へとつながっていく。
7年ほどの愛生園でのハンセン病医療にあたる生活ののち、小川は結核を発症して療養のために帰郷する。
小川がハンセン病医療の体験をもとに著した『小島の春』が小川の帰郷後に映画化される。昭和15年(1940)に公開された映画「小島の春」は、戦時色に染まっていた当時の映画界のなかでは異色の作品で、大ヒットを記録する。小川はこの『小島の春』に関する印税を、すべてハンセン病患者のために寄贈した。この映画のヒットの3年後となる昭和18年(1943)4月、小川はわずか41年の生涯を閉じる。ハンセン病という難しい疾病に向かい合い、その医療にささげた後半生であった。
県立甲府西高校に建てられている歌碑
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