■研究情報
【 外部資金による研究 】
科学研究費
基盤研究(C)
研究テーマ:日本的畜産文化成立過程の動物考古学的研究
研究代表者:
植月 学(当館学芸員)
研究期間:
平成27年4月〜平成30年3月(3年間)
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研究概要
日本列島における牛馬利用の文化はそのルーツであるユーラシア草原地帯の騎馬遊牧民の文化とは多くの点で異質であるとされます。しかし、近年の動物考古学的研究からは、牛馬導入初期にあたる古墳時代や古代には後世とは異なる様相があったことが明らかになりつつあります。こうした特徴が大陸との直接的関係を示すのか、またはそれ自体も変容の結果なのかは、@日本列島における牛馬利用の細かな時期的変遷の把握と、A東アジア地域の同時代資料の調査によって明らかにできると考えられます。本研究では両地域の牛馬遺体を動物考古学的な視点により見直すことで、日本列島における牛馬利用の受容から日本的な変容までを東アジアとの関係において解明することを目的としています。 |
研究の経過
東日本各地の古墳〜中世遺跡出土牛馬遺体を調査し、両種の比率、年齢構成、性比、体高・プロポーション、部位組成、解体・加工痕、病理などの動物考古学的検討を進めています。また、研究協力者の覚張隆史氏(金沢大学)と共に臼歯の同位体分析による食性(給餌様式)、産地などの検討も進めています。 |
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由比ヶ浜南遺跡から出土した牛馬などの骨
非常に残りが良く、体格や年齢、病理などの分析に適している。 |
由比ヶ浜南遺跡から出土した馬骨から推定された体高の分布。130cm代前半を中心とする(植月2016)。 |
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炭素同位体分析をおこなった山梨県内の遺跡 |
炭素同位体分析に用いた馬の上顎臼歯の一例 |
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ウマ臼歯エナメル質の炭素同位体比
右端の2遺跡は高い炭素同位体比が高い。C4植物を多く摂取していたと推定され、雑穀を積極的に与えられていたと考えられる(覚張・植月2016)。 |
主な調査活動 |
年月 |
内容/実施場所 |
27年4月〜(継続中) |
笛吹市地耕免遺跡出土馬遺体(古代) |
27年4月〜(継続中) |
都留市谷村城跡出土馬遺体(近世) |
27年5月〜(継続中) |
神奈川県由比ヶ浜南遺跡出土牛馬遺体(鎌倉時代) |
27年5月〜(継続中) |
青森県大光寺新城跡出土牛馬遺体(中世) |
27年6月〜(継続中) |
千葉県北下遺跡出土牛馬遺体(古代) |
27年6月 |
宮城県多賀城跡出土馬遺体(古代) |
27年11月 |
長野県飯田市内古墳群出土馬遺体(古墳時代) |
27年11月 |
甲府市朝気遺跡出土牛馬遺体(平安時代) |
27年12月 |
笛吹市竹居古墳群出土馬遺体(古墳時代) |
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研究成果の発表 |
学会発表
年月 |
発表者 |
題目 |
学会名 |
場所 |
27年7月 |
植月学・ 塩谷風季・ 網倉邦生 |
山梨県谷村城における近世の動物資源利用 |
日本動物考古学会第3回研究大会 |
奈良文化財研究所 |
27年7月 |
覚張隆史・植月学 |
歯エナメル質の炭素安定同位体比に基づく山梨県古代・中世遺跡出土馬の食性復元 |
日本文化財科学会第32回大会 |
東京学芸大学 |
27年10月 |
植月学 |
東国の古墳時代・古代の馬 |
古代の馬研究会 |
大阪歴史博物館 |
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論文
年月 |
著者 |
題目 |
掲載誌名 |
発行 |
28年5月(予定) |
覚張隆史・植月学 |
同位体化学分析に基づく山梨県遺跡出土馬の給餌形態の復元 |
山梨県考古学協会誌 24号 |
山梨県考古学協会 |
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報告書
年月 |
著者 |
題目 |
書名 |
頁 |
発行元 |
28年3月 |
植月 学 |
山梨の自然が育んだ馬産の歴史 |
山梨県立大学地域研究交流センター 2015年度観光講座 山梨の温故知新〜自然と人間の関係から探る〜 |
61-65 |
公立大学 山梨県立大学 地域研究交流センター |
28年3月 |
植月 学 |
朝気遺跡から出土した動物遺体 |
甲府市文化財調査報告82 朝気遺跡 |
30-31 |
甲府市教育委員会 |
28年1月 |
植月 学 |
由比ヶ浜中世集団墓地遺跡から出土した動物遺体 |
由比ガ浜中世集団墓地遺跡(No.372)発掘調査報告書(由比ガ浜二丁目1014番15地点) |
111-118 |
株式会社 博通 |
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講演
年月 |
題目 |
単元名(主催) |
会場 |
28年3月 |
牛馬の考古学 |
平成26年第1回研究例会「動物と山梨の歴史・文化」(山梨郷土研究会) |
山梨県立図書館 |
28年2月 |
山梨の遺跡から見た生活変遷史 |
山梨学U(山梨県立大学) |
山梨県立大学 |
27年10月 |
ゴミは食生活に関する情報の宝庫 |
平成27年度 考古学ゼミナール「考古学からみた「ゴミ」事情」(神奈川県教育委員会) |
かながわ県民センター |
27年10月 |
山梨の自然が育んだ馬産の歴史 |
山梨県立大学地域研究交流センター 観光講座2015 山梨の温故知新〜自然と人の関係から探る〜 |
山梨県立大学 |
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■問い合わせ
山梨県立博物館
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