リズミカルに続く松並木を進むと、樹の間に富士が見え隠れする。駕籠に乗る女性、草鞋の紐を結びなおしたり汗をぬぐう駕籠かき、徒歩の虚無僧、尻につけた鈴の音さえ聞こえてくるような軽やかな馬の歩どり、さまざまな旅の様子が描きとめられている。松間の富士の構図は、河村岷雪の『百富士』「程ヶ谷」から着想を得ている。
※保土ヶ谷(神奈川県横浜市保土ヶ谷区)
…保土ヶ谷宿は、武蔵国橘樹(たちばな)郡と相模国鎌倉郡の境界付近に位置する東海道の宿場。本図は、東から西へ、宿の南端にある武蔵・相模国境の品濃坂より富士を望む。右側に見えるのは、庚申塚で青面金剛の石像が祀られているとされる。
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