大月の原も広重が繰り返し画題に採り上げた場所であるが観測地は明らかになっていない。山間にあって富士の稜線をほとんど見ることのできない大月で、突然顔を見せる富士に広重は心奪われたのであろう。僧形の人物が一人佇(たたず)み、秋風の渡るすすきの原を眺めている。大月の原を外から見下ろす構図で、寂寞とした情景がどこまでも続くかのようである。
※大月原(山梨県大月市)
…大月宿は駒橋宿(大月市)と下花咲宿(同)との間にある甲州道中の宿場で、上吉田村(富士吉田市)に至る谷村道(富士道)との分岐点であった。本図は桂川対岸にある岩殿山麓からの遠景と推測される。
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