稲刈りが済み、落葉した立木にはこもが巻かれ、田圃は冬支度が整っている。道行く旅人は、楽しげに語らいながらゆっくりと進んでいる。道の真ん中に大木を据えて来た道と行く道を説明し、遠近感を表出する構図は広重の常套手段である。この場所は『冨士見百図』にも収められており、もとになった写生の存在をうかがわせる。
※大森(東京都大田区)
…大森村は、内川、呑川の河口に開けた海辺の村であり、将軍の御鷹場に指定され、鳥見屋敷などが置かれていた。本図は、村内を通過する東海道を手前に富士を望む。街道には並木が見え、村内の屋敷の屋根が描かれている。遠方の山並みは丹沢山地。
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