鋭角の網干(あぼし)越しに富士の稜線と弧を描く海岸を眺める。尖った網干の先から裾までのゆるやかな曲線、同心円状に打ち寄せる波、山や民家の屋根の三角の連なりなど、幾何学的なモチーフから構成されている。万葉の時代から富士の名所であった田子の浦に、独創的な構図で挑戦したのであろうか。
※田子の浦(静岡県静岡市、由比町)
…歌枕に詠まれる田子の浦は、古代、富士川以西の駿河湾を指していたが、中世になって富士川以東の海岸も指すようになったと考えられている。本図は、海岸から富士を望む方角から、蒲原宿、由比宿付近の海岸からの眺望と考えられる。
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